本研究は、地方自治体におけるデジタルトランスフォーメーション（DX）の円滑な導入を目的に、住民の地域満足度およびプラットフォーム受容に影響を与える要因を探究したものである。具体的には、2つの構造モデルを構築し、第一に、DXが地域の持続可能な発展にどう寄与するかを、第二に、住民が地方DXを受容する要因を分析した。
第1のモデル（図1, p.263）では、「行政DXの有用性認識」「インターネット親和性」「プラットフォームの使いやすさ」「住民自治への関心」「地域活動参加」「地域満足度」「政治への関心」の7変数を含み、構造方程式モデリング（SEM）により分析した。その結果、インターネット親和性がプラットフォームの使いやすさに強く影響し（係数=1.39, p<0.001）、使いやすさが地域満足度を高める効果（係数=0.30, p<0.05）を示した。また、住民自治への積極姿勢も地域満足度に影響を与えていた（係数=0.25, p<0.01）。
第2のモデル（図2, p.264）では、人口規模に応じて分析を分け、人口20万人未満の自治体においては、UI/UX（ユーザーインターフェース／体験）への関心がDX受容に最も強い影響を与えていることが判明した（係数=1.00, p<0.01）。一方で、地域満足度はDX受容に影響しないことが示された。この結果は、高齢者が多い地域ほど、視認性や操作性の悪いアプリを敬遠する傾向にあることと一致しており、使いやすい設計がDX導入に不可欠であると示唆している。
対して、人口20万人以上の自治体では、いずれの変数もDX受容に有意な影響を与えなかった。この理由としては、大都市圏の住民特性が多様であり、単一のモデルで共通因子を特定するのが困難である点が指摘されている。
本研究の意義は、DXの技術的要因に加え、住民の心理的・文化的要因（自治意識、インターネット親和性、UI/UXの関心など）を定量的に評価した点にある。結論として、プラットフォームの使いやすさやUI/UXの配慮が、地域DXの成功における鍵であることが明らかになった。今後の研究では、DXの導入価値に対する住民と自治体の認識の共有を評価する項目を加えることが提案されている。
The purpose of this study was to examine strategies for the smooth
implementation of Digital Transformation (DX) in municipalities using two
approaches. First, a model of local DX adoption was developed by exploring factors
that influence Acceptance of local DX by platform users. Second, the relationship
between local DX and community satisfaction was clarified for sustainable local
development. It suggests that basically, Interest in UI/UX was important in the
model. By advancing this research, we will contribute to business transformation
and the addition of new value in the public sector.
雑誌名
EcoDesign for Circular Value Creation: Volume I
発表タイトル
Factors Affecting Local DigitalTransformation Toward the Sustainable Local Development
著者名
Takaharu Takikawa, Yuna Seo
DOI
引用
Takikawa, T., Seo, Y. (2025). Factors Affecting Local Digital Transformation Toward the Sustainable Local Development. In: Fukushige, S., Nonaka, T., Kobayashi, H., Tokoro, C., Yamasue, E. (eds) EcoDesign for Circular Value Creation: Volume I. Springer, Singapore. https://doi.org/10.1007/978-981-97-9068-5_17
